炎と水の闘い(2)

「クレバート…どう思う?」
2人の闘いを特等席でお楽しみ中のこの国の王、セボルトは問いかけた。
するとそれに応えるように柱からこっそり顔を出す王の側近、宮廷占術師であるクレバート。
「セボルト様」
「一体誰が勝つのかにゃあ?本当に楽しみだ…」
セボルトは瞳を少し曇らせるとこう言った。
「勝った者が…僕の…お父様を殺害した犯人の可能性があるからね!」

「だから彼等の望みは叶えてあげなきゃ」

「例えそれが…死ぬ前の最後の望みだとしても」
ロード・ラベリア・シオール・カルラ…
4人の魔術師を順番に眺めながら王は微笑んでいた…。






「さ〜て」
ロードはラベリアと充分距離をとったところで止った。
「そろそろ…避けるのも面倒くさくなってきたな」
ラベリアの攻撃に一方的に逃げるだけだったロード。
攻撃するのが面倒だった…こともあるが、無駄に自分の魔力を使いたくなかった。
というのが本当の所。そして逃げながらロードは考えていた。
「あの馬鹿女の攻撃も威力も大体分ってきたし腹も減ってきたし…あ、昼飯出るよな!?」
とこの闘いの後の豪華な昼飯をちらりと脳裏に思い浮かべた。

「はにゃ?」
セボルトはロードの動きが止ったことに気付いた。
「何だ?あの性悪…妙に落ち付いてるじゃないか…」
その変化に気付いたのはセボルトだけじゃなく、闘いを陰で見ていたシオールもだった。

ロードは一呼吸おくと自分の考えを整理してみた。
「あの馬鹿女の炎はでかくて正確なのはいい。俺が何発か「水刃」を
放ったところであの火力で蒸発すんのは知れてる」
ラベリアの炎は本当に強力なものでこれまでロードが闘って来た連中よりは遥かに上をいっていた。加えて水と炎の相性からいえば、水の方が強いのは明確なのだが、ラベリアの炎は周囲の水を蒸発させてしまう程の威力。普通の水の攻撃では歯がたたない。だからロードはゆっくりと攻撃の体制をとる。
「「水刃」が使えねえなら無駄撃ちするよりこの1球に掛けるか!」
と自分の青い杖を握り魔力を集中させていく。
『何!?』
その様子にラベリアは攻撃の手を止める。明らかに何か仕掛けてくることがわかったから。水の攻撃なら蒸発させることくらいできるだろう。ラベリアは防御体制で攻撃を待つ。
その瞬間ロードは魔術を放った。貯めていたものを一気に吐き出すように。
「かっ飛ばせ!激流噴水!」
同時に青い杖の先端黒水晶からものすごい量の水球が現れ、それは高速でラベリアの方へ放たれた。ロードは最初からこの1球で終らせるつもりだった。その為に攻撃のタイミングを見計らっていたのだ。
「すごい水の量だ!それに早い!!勝負あったか!?」
シオールは息を飲む。
一方攻撃されたラベリアは自分に向かってくる巨大な水の球をなす術もなく立ちつくしていた。炎の防御をとったとしてもその炎ごと流されてしまうのが判ったから。
『こんなの…よけられない!』
そしてラベリアは攻撃を正面からくらった!
瞬間ラベリアの脳裏にふと師であるビアンカの顔が浮かぶ。

『ビアンカ先生…やっぱりロードは強いです…

でも私…満足かも

ロードはけして差別なんてしないから…

あたしはロードのおかげでたぶん強くなれた…

もう一度闘う事がすごくすごく嬉しかったんだ』
謁見の間で会ったロードのふてぶてしい顔が浮かぶ。
変わらない…

『あんたは昔と全然変わってなくて…

あたしの事ぜーんぜん覚えてなかったけど』
思い出したらだんだん腹がたったくる。なんでこいつ覚えてないんだろう!
でもラベリアがこんなに強く頑張れたのは彼がいたから。
薄れていく意識の中でラベリアは思った。

『あんたはあたしの目標で憧れだったんだよ…』

審判の手があがる。
「勝者…ロード・ハイデン!」
瞬間、観客から激しい歓声や拍手があがった。
2008年07月14日 | Comments(0) | Trackback(0) | ブログ小説

炎と水の闘い(1)

―そう…私はもう弱いままの女の子じゃない
 あの頃ロードと闘っていなかったらきっと気付かなかった―

「ロード!勝負よ!賭けは忘れてないでしょうね!?」

賭け。昨夜月明かりの下でロードとした賭け。
「私は今度こそ!負けないから!」
意気込むラベリアにロードは
「…ええと」
『こいつ誰だっけ?』
結局のところ思い出せないでいた。

―そしてもう逃げない!!―
赤い杖をかかげながら、空中に魔法陣を描きはじめるラベリア。
彼女は曲がりなりにも魔術の基本を師の元で学んできた。
ここまで勝ち残ってこれたのも師のおかげだと思ってもよかった。
だが、彼女が本当にもう一度闘いたかった相手は今目の前にいた。
「燃え盛る紅き炎の子よ我が命に従いその身を焦したまへ」
詠唱を唱え始めるラベリア。
「我はここに契約せし紅蓮の心のままに」

―私はこの闘いでロードに勝ってそして願う…―

―この世界から差別をなくす…
 魔力を持った人でも平和に暮らせるそんな世界が
 私は欲しい…―

それが彼女の願いだった。
「焼き潰せ!!曝馬炎!」
魔法陣から強い炎が生まれ、ロードに迫る。
「くっ!水壁!!」
とっさにロードは水の防御をとろうとするが…
「ぎゃああ!」
ラベリアの攻撃炎に押されてあえなく防御解除で身をかわした。
しかし今の攻撃でロードの髪先が少しばかり焦げてしまったようで
彼はほんの少し青冷めた。
「くっそぉ!アフロにする気か!?」
後、少し解除して避けるのが遅かったら今頃黒焦げだろう。
元々水と炎では水の方が有利なのだが、ラベリアの炎は周囲の水分を全て蒸発させてしまう程の勢いがあった。
「降り注げ!烈火の豪雨!」
ロードが体制をたてなおそうとした時、それを逃さまいとラベリアは
すぐ様次の攻撃に入った。
「焔雨降来!」
ラベリアの描いた魔法陣はいつの間にか真上に移動しており、
そこから炎が生まれふくれあがり、一気に破裂した。
破裂した激しい炎は激しい炎の雨となってロードを襲った。
『まっ真上〜?』
「チッ!」
と舌打ちしながらロードはまさか2回目の攻撃で上取るか〜?とか思いながら
避ける。
避ける。
また避ける。

「逃げてばかりね!ロード!!あたしの勝ちは決まったわね!」
「ははっ」
『うるせー女…』
と思いながらロードは炎の雨を避ける。
2008年04月23日 | Comments(0) | Trackback(0) | ブログ小説

6. 臆病な魔術師 (4)

「よろしく…」
ラベリアは弱弱しく応えた。
これから目の前の少年と真剣勝負をすることになった。
もちろんラベリアにとって実践は始めてのことだった。
不安と緊張で自然に汗が出てくる。
「んじゃ、とっととやろうぜ!」
ラベリアの緊張を余所に少年は無神経にだるそうだった。
ラベリアがグズグズしているので先攻はロードから始まった。
「流れる水の子よ  我が前に立つ者に」
ロードの詠唱が始まり、杖の先端の黒水晶が青い光を放つ。
ラベリアも慌てて防御の体制をとろうとするが、偶然にもロードの瞳を見てしまう。その瞳は完全に迷いが感じられなかった。一瞬で彼女は気付く。
それはラベリアが持っていないとても強い瞳で

「飛びかかれ!水刃!!」

いつの間にか呪文は完成し、杖から水の攻撃魔術が発動される。
水の刃は1つ2つではなく、何十発も発動されラベリア目がけて矢のように飛んでくる。彼女の服や髪にそれが当たりひどく冷たい思いをした。
結局ラベリアは負けた。反撃もできずに。
悔しくて涙が出た。
だけどこの悔しさはいじめられた時とはまた違った。
そして心の奥に火がついた。

「どうしたラベリア?悔しいのか?」
ビアンカ先生は負けて泣いている自分を見下ろしながら言った。
辺はもう夕方で、先生が今どんな顔をしているのか夕陽の逆光で見えなかった。
「はい…先生」
ラベリアは悔しかった。
「私…悔しいです!」
自分とあまりにも違う男の子。
ラベリアはこの時はじめて強くなりたいと思ったのだ。

「もう誰にも負けたくないです!!」
ラベリアはこの日、逃げることをやめた。
2008年03月13日 | Comments(0) | Trackback(0) | ブログ小説

6. 臆病な魔術師 (3)

人らしきものはやはり人で、ラベリアとそう変わらない男の子だった。
服はボロボロで行き倒れそのものだった。
ぴくりともしない様子を見てラベリアは
「うきゃあ!子供が!ししし死んでる!」
思わず震えあがる。
「しょうがないわ…せめて埋めてあげないとねえ」
このままにはしておけないと2人が思った時だった。
「に…」
ふいに少年の口が動いた。
「に…にく…肉♪…うへへ」
目を回しながら口からは涎(よだれ)が出ており、明らかに何かおかしい症状が出ていた。その有り様にラベリアとビアンカ先生は一瞬固まった。少年はなおも
「ビーフ…チキン…ポークうへへ」
とかブツブツ言いながら妖しい夢を見ている。
それが毒茸を食べた後に見られる症状だと気付いたビアンカ先生は
「!!このガキ毒茸食べて幻覚見てやがる!やばい状況だ!とりあえず運ぶよ!」
「ひぃっ!」
ビアンカ先生の剣幕に押され、ラベリアは小さく非鳴をもらす。
毒茸を食べてへんな夢を見ていた少年。これがロードであり、これがラベリアとロードの出会いだったりする。



「で?何であんな所に?名前は?」
「ほれはほーろ!はひひへんは!」
もごもご食べながらロードは自分の名前を言ったが、ラベリアとビアンカにはさっぱりだった。
「何言ってるのか…」
「わからん…」
とりあえず解毒剤を飲ませ、意識が戻ったロードはだんだん腹の音まで意識が戻ったようで、ロードはビアンカの経営するバーでご馳走になっていた。
「とりあえずよく食べる奴ね毒茸まで食べて」
ビアンカは飽きれた様子で肉にがっつくロードを横目で眺める。
「はふははっぱ!へもふまほうはっはんは!」
相変わらず、何を言っているのかわからない。
少し時間を置き、ようやく満腹になったロードは
「は〜ここ何日かまともなもん喰ってなかったんだ!ありがとよ!」
お礼を言ったロードはそそくさと店を出ていこうとするがビアンカは逃がさない。
「待ちな!」
食い逃げの常習でもあるロードだったが、ビアンカの次の言葉に足を留めた。
「お前…魔術が使えるだろ」
それにラベリアは驚いた。
『ええっ!?』
この村で先生と自分以外の魔力を持った人間に彼女は始めて会った。
しかも自分と同じくらいの少年。
「だから?ここで披露しろとでも?」
ロードはこの国の異端者の扱いには慣れてしまっており、さほど動じずに応えた。
「私がこれから言うことに従うのなら飯はタダにしてやるよ」
ビアンカは一瞬厳しい目付きでロードを見て言った。
「私の愛弟子ラベリアと手加減なしで魔術勝負だ!」
2008年02月29日 | Comments(0) | Trackback(0) | ブログ小説

6. 臆病な魔術師 (2)

「おいブス!」
「土の味は美味しいか?」
近所に住む悪ガキは抵抗できないことが判っているラベリアに聞いてくる。
「ほらほら魔術は?」
「使いたくても使えないの〜?」

(魔力を持った人間は無闇に人を傷つけてはならない)
(破ればその者は即刻処分されることになる)
この国の異端者の扱いはそんなものだった。

「俺達を傷つけて広場で火あぶりなんてことになりたくないもんな!」
悪ガキ共は示しあわせたかのように笑う。
幼いラベリアは目に涙を浮かべて必死で堪えていたが、堪えきれずに涙は頬を濡らす。頬は先程地面になすりつけられて泥や小さなすり傷がついていた。
悪ガキ共が尚もラベリアに罵声を送ろうとしていたその時、ガキ共の背後から忍びよる女がいた。
「バレる前に坊や達を消し炭にするわよ?」
ドスの聞いた声で囁くその女にラベリアは見覚えがあった。
「て!言いたいとこだけどね!」
女は間髪入れずに悪ガキの一人を殴った。グーで。
悪ガキの一人はその威力にふっ飛び、仲間の2人はその光景に青くなった。
普通の大人は子供相手に本気でぶん殴ることはしないからだ。
しかしその女はそうではなかった。
「魔術がダメなら拳で黙らせる!」
よく見れば綺麗でセクシーなその女にラベリアは駆け寄った。
「ビアンカ先生!」
「ハーイ…ラベリア…」
しかし駆け寄ってきたラベリアにちらりと目を向けたビアンカは
「あんたも何ナメられてんの!」
とすかさず凄まじい鉄拳をくらう。
「ご…ごめんなさい!」
とふっ飛んでいくラベリア。
ビアンカ・ロペス。
それがラベリアの魔術の師匠とも呼べる人だった。ビアンカ先生はセクシーで強くて怖くて何より、無敵な先生だった。
「先生!今日はどんな魔術教えてくれるのですか?」
「その前に顔の傷…治療するよ!」
厳しい先生だけどこういうところが嬉しい。ラベリアにとって大好きな先生だ。
いつか自分も先生のようないい女になろう…と密かにラベリアは憧れを抱いていた。

そして頬の傷を魔術で癒し、昼食でも取ろうと歩いていたラベリアは数メートル先の茂みの近くで倒れている人らしきものを発見した。
「え?先生!人?が倒れてる??」
2008年02月18日 | Comments(0) | Trackback(0) | ブログ小説
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